今回はアンモニアの工業的製法である、
ハーバーボッシュ法の解説をします。
ハーバーボッシュ法は実に単純な反応で、
という反応でアンモニアを作る方法です。
かなり単純な反応なので、
ハーバーボッシュ法で困る受験生は少ないと思います。
そこでこの記事では、
ハーバーボッシュ法の原理や歴史、
アンモニアの製法の現在などを解説します。
読み物程度に読んでみてください。
ハーバーボッシュ法とは
アンモニアは肥料の材料になるため、
人口が急激に増加してきた19-20世紀には、
安定的な食料供給のために必要不可欠でした。
そんな中でアンモニアを大量生産する方法を考えたのが、
フリンツ・ハーバーとカール・ボッシュです。
その製法を2人の名前から「ハーバーボッシュ法」と呼びます。
ハーバーボッシュ法は、
気体の水素と気体の窒素を反応させるという
かなりシンプルな方法。
しかし単に水素と窒素を混ぜるだけでは、
ある問題によって大量生産はできなかったのです。
その「問題」に着目しながら、
ハーバーボッシュ法の原理を確認していきましょう。
そして20世紀頭に「ハーバーボッシュ法」が発表され、それに呼応して1912年にオストワルト法の特許申請が行われました。
ハーバーボッシュ法の原理
ハーバーボッシュ法を理解するためには、
「化学平衡」を理解している必要があります。
化学平衡が不安なあなたは以下を参考にしてみてください。
先ほどの説明した通り、
ハーバーボッシュ法では水素と窒素からアンモニアを作ります。
この反応は平衡反応です。
ルシャトリエの原理から、
低温・高圧にすればするほど平衡が右に傾きます。
しかしここで「ある問題」が起こるのです。
確かに低温で反応させれば
材料の水素と酸素に対してたくさんのアンモニアができますが、
反応の速度が落ちて大量生産できなくなってしまうのです。
この問題に取り組んだのがハーバーとボッシュ。
反応速度の問題を、
Fe3O4という触媒を発見することで、
解決しました。
つまりハーバーボッシュ法の1番のキモはこの「Fe3O4触媒」。
触媒は暗記するしかないですが、
センター試験頻出なのでしっかり押さえておきましょう。
ハーバーボッシュ法の歴史
ハーバーボッシュ法の水素は、
メタンを水で酸化することで手に入れ、
窒素は空気から手に入れます。
このことから、
「水と炭素と空気からパンを作る方法」
とも言われました。
アンモニアは肥料の材料になるからです。
ハーバーボッシュ法の誕生により、
作物の生産量が増え、人口爆発の問題が解消されていきました。
そして先ほども説明したように、
机上の空論だった「オストワルト法」が日の目をみるようになりました。
しかしこれはハーバーボッシュ法によって、
火薬の材料になる硝酸を大量生産できることを指します。
これによって、
「水と炭素と空気から火薬を作る方法」
が確立してしまったのです。
ハーバーボッシュ法が開発されたのが1906年、
直接の因果関係は不明ですが、
1914年に第一次世界対戦が始まり、世界大戦の時代に入っていきます。
現在のアンモニアの製法
水素は天然ガスから手に入れていますが、
アンモニアは現在もハーバーボッシュ法によって生産されています。
しかし近年、
東工大の細野教授によって新たな触媒が開発されました。
ハーバーボッシュ法では、
100気圧以上・400℃程度の条件だったので、
かなり大きなプラントを作る必要がありました。
細野教授が開発した触媒は、
12CaO・7Al2O3とルテニウムを組み合わせたもので、
「1気圧・350℃程度」の条件でアンモニアを作れます。
(引用:細野教授出演NHK「サイエンスZERO」)
こんな研究室の一画でアンモニアを生産できるというのは衝撃的ですね。
この研究に後押しされるかのように、
新たな触媒が次々と開発されています。
また平衡を素早く右側に傾けるために、
アンモニアを効率的に回収するための物質である、
「アンモニア分離ゼオライト膜」も出てきています。
将来、教科書が、
「触媒はFe3O4」から、
「触媒はルテニウム系12CaO・7Al2O3エレクトライド」
と書き換わったら受験生は大変ですね(笑)
ハーバー・ボッシュ法に代わる新アンモニア合成法
まとめ
今回はハーバーボッシュ法の解説でした。
ハーバーボッシュ法は、
平衡を進めながら反応速度を上げるために、
Fe3O4を触媒に用いるところがキモでした。
また、大学受験の知識を離れて、
大学の研究についても紹介しました。
大学に入ったらこんな研究をするんだ!
と思うと勉強もはかどりますね。
反応式がN3になってますがN2の間違いではないですか?
わ、ほんとですね、お恥ずかしいミスです…笑
ご指摘ありがとうございます、直しておきます!