「高校化学で習う油脂が覚えられない。」
「液体なのか固体なのか区別できない」
「液体の脂肪油なのに乾性油ってどういうこと!?」
あなたも有機化学の油脂の分野で、
このように感じたことはありませんか?
油脂の分野はすぐに計算問題をやらされるため、
意外と知識が曖昧になりがちです。
あなたが油脂をなかなか覚えられないのは、
油脂の性質を本質的に理解しておらず、
知識を効率的に分類・整理できていないからです。
ここでは油脂の性質を本質的に解説していきます。
ここの内容を理解することで、
高校化学の油脂の性質を仕組みから理解でき、
頭の中で必要知識がきれいに整理されます。
もう油脂の暗記への苦手意識はなくなるでしょう。
それでは以下の流れで解説していくので、
ぜひ読み飛ばさずに読んでみてください。
油脂は脂肪酸+グリセリン
「油脂」とは、
グリセリンに3つの高級脂肪酸がエステル結合した化合物です。
脂肪酸とはギ酸や酢酸などの-COOHを持つ物質で、
高級脂肪酸とは以下のように分子量が大きな脂肪酸です。
油脂は、グリセリンの3つの-OHに、
様々な高級脂肪酸がくっつくことによって、
その性質が変わってくるのです。
つまり、
油脂の性質はくっつく脂肪酸に依存してきます。
ということで、
まずは油脂を構成する脂肪酸の性質を、
確認していきましょう。
油脂を構成する脂肪酸
油脂を構成する一番単純な脂肪酸が、
「飽和脂肪酸」です。
飽和は「いっぱいになっている」という意味で、
二重結合がないから水素Hがいっぱいになっていますね。
一方で、炭化水素に二重結合を含み、
水素がくっつく席が余っているのが「不飽和脂肪酸」です。
高級脂肪酸は分子量が大きいため、
お互いに分子間力で強く引き合っています。
中でも飽和脂肪酸は一直線の構造で、
お互いに隙間なく密集してより強く引き合います。
だから飽和脂肪酸は常温で「固体」になります。
一方で、不飽和脂肪酸には二重結合があり、
C=Cの構造が出てくるたびに折れ曲がっていきます。
これによって分子同士が密集できず、
分子間力が弱まって「液体」のものが多いです。
脂肪酸の性質は、
このように構造から想像できるのです。
以上の性質を表にまとめると以下のようになります。
油脂の分類
繰り返しになりますが、
油脂はグリセリンに脂肪酸がくっついたものです。
ここでどんな脂肪酸がくっつくか、
具体的には飽和・不飽和のどちらがくっつくのか、
によって油脂の性質が変わってきます。
それでは油脂の性質を確認していきましょう。
①脂肪と脂肪油
常温で固体になる油脂を「脂肪」、
常温で液体になる油脂を「脂肪油」といいます。
ここまで読めば想像できる通り、
飽和脂肪酸を多く含む油脂は脂肪(固体)に、
不飽和脂肪酸を多く含む油脂は脂肪油(液体)になります。
牛肉の油は飽和脂肪酸を多く含み、
鶏肉の油は不飽和脂肪酸を多く含みます。
そのため調理した牛肉が常温になると、
白い固体の油が出てきてしまいます。
だからお弁当のおかずには、
牛肉よりも油が液体のままの鶏肉の方が、
よく使われるのですね。
また、一般的には脂肪は陸上動物の油脂に多く、
脂肪油は植物や水中動物の油脂に多いです。
少し話が逸れましたね。
脂肪油は二重結合を含んで液体ですが、
Ni触媒を用いて水素を付加すれば固体状になっていきます。
このようにして得られるのが、
マーガリンなどの「硬化油」です。
まとめると、
・飽和脂肪酸を多く含むのが脂肪(固体)
・不飽和脂肪酸を多く含むのが脂肪油(液体)
・脂肪油のC=Cを消していくと硬化油(固体)に
ということになります。
②乾性油と不乾性油
次に液体の油脂である脂肪油の性質を見ます。
脂肪油は二重結合C=Cを含みますが、
その量によって「油脂の乾きやすさ」が変わってきます。
二重結合がたくさんある場合、
空気中の酸素と以下のように反応しやすいです。
これによって分子同士が結びつき、
次第に固化していくのです。
このように二重結合が多く、
空気中で固化しやすい脂肪油を「乾性油」といいます。
一方で二重結合が少なく、
空気中で固化しにくい脂肪油を「不乾性油」といいます。
これらは二重結合を含む脂肪油の性質で、
固体である脂肪や硬化油とは関係ないことに注意しましょう。
まとめ
今回は油脂の解説でした。
油脂に含まれている脂肪酸は、
以下のような種類がありました。
この脂肪酸がグリセリンにくっつき油脂になると、
脂肪酸の種類によって以下のような性質が現れるのでした。
このように整理して理解しておけば、
比較的頭に残りやすいのではないでしょうか。
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