高校化学の高分子化合物の分野は、
覚えることが多くてとっても大変ですよね。
その中でも「糖類」は覚えるだけでなく、
立体的な構造式を書くのにも一苦労です。
あなたも糖類の名前を覚えるのに苦労したり、
構造式を正確に暗記するのに苦労したりしていませんか?
糖類の名前や構造式・性質を覚えられないのは、
糖類の本質的な分類の仕方や構造式の捉え方を、
理解していないからです。
ここでは糖類の本質的な考え方をお伝えします。
この記事の内容を理解することで、
糖類の名前を本質的・体型的に理解でき、
構造式で必要以上に悩む必要がなくなります。
センター試験の過去問でいつも間違えてしまう、
覚えたと思っても次の日には忘れてしまう、
そんなあなたは必見です。
目次
糖類とは?〜単糖まとめ〜
「糖類」とは、
C6(H2O)6などという形をした単糖が次々と繋がってできる化合物です。
さまざまな糖類を見ていくためには、
まずは「単糖」を学ぶ必要があります。
単糖は以下で詳しく解説しているので、
先にこちらをごらんください。
グリコシド結合
単糖は以下のように、
1位の-OHが他の物質と脱水縮合反応を起こします。
単糖同士がグリコシド結合を起こすことで、
巨大な分子になっていくのです。
まずは2つの単糖が繋がった二糖を見ていきましょう。
二糖の種類と性質
単糖がつながってできる糖類のうち、
2つの単糖からなるものを「二糖」といいます。
二糖は、単糖の組み合わせによって、
さまざまな種類が出てきます。
そう聞くと覚えるのが大変に思うかもしれませんが、
入試レベルで覚えるべき二糖は4種類です。
二糖を覚えるときには、
・二糖の名前が何なのか
・どんな単糖が材料なのか
・どのように結合するのか
に注意しましょう。
最後の「どのように結合するか」は、
少しイメージしづらいかもしれませんが、
「どこの-OH同士が繋がるか」と思えばいいです。
それでは順番に見ていきましょう。
二糖の種類①:マルトース
=α-グルコース+α-グルコース
α-グルコース同士が1位と4位で結合したのが、
「マルトース(麦芽糖)」です。
マルトースにはグルコースの還元性を示す構造があり、
還元性を示します。
ちなみに豆知識ですが、
サツマイモを焼くとデンプンが程よく切れて、
マルトースが出てきます。
焼き芋の美味しさの秘訣はマルトースなんですね。
二糖の種類②:セロビオース
=β-グルコース+β-グルコース(裏)
β-グルコースの1位と裏返したβ-グルコース4位で
結合したのが「セロビオース」です。
マルトース同様還元性を持ちます。
二糖の種類③:ラクトース
=β-ガラクトース+β-グルコース(裏)
β-ガラクトースの1位と裏返したβ-グルコース4位で
結合したのが「ラクトース(乳糖)」です。
こいつもグルコースの1位が残っており、
還元性を示します。
二糖の種類④:スクロース
=α-グルコース+β-フルクトース(裏)
α-グルコースの1位と裏返したβ-フルクトースの2位で
結合したのが「スクロース(ショ糖)」です。
普段一番よく見る砂糖がショ糖です。
スクロースは単糖同士が還元性のある構造で結合し、
還元性を示さなくなります。
入試レベルの二糖の中で唯一還元性を持たないので、
注意して覚えておきましょう。
二糖まとめ
二糖の種類と性質をまとめておきました。
毎回構造式を覚えるのではなく、
材料から作っていけるようになりましょう。
多糖の種類と性質
次に「多糖」の種類を見ていきましょう。
多糖はとにかくたくさんの単糖が繋がったものです。
1位の炭素が次々と結合に関わるため、
鎖状構造は取れずに還元性はありません。
単糖、二糖の性質だった甘味もありません。
そんな多糖の種類は当然無数にありますが、
入試レベルで知っておきたいのは3種類です。
しかも入試レベルの多糖を作る単糖は、
すべてグルコースです。
だから多糖はあまりビビる必要はありません。
ではまずはデンプンから見ていきましょう。
多糖の種類①:デンプン
デンプンとは、α-グルコースが、
ただただひたすらくっついたような化合物です。
この画像からも分かる通り、
グルコースが繋がるとくるくると丸まっていきます。
この結果デンプンは「螺旋構造」になっています。
(http://www.che.ichinoseki.ac.jp/sosei/hei26/hei26-04.htmlより)
デンプンに対してヨウ素液を加えると、
ヨウ素分子がデンプンの内部に取り込まれて、
「ヨウ素デンプン反応」を起こします。
中学校などの理科実験でもやった、
ごはんやジャガイモが紫色になる反応です。
さて、デンプンの構造について少し深めます。
デンプンの基本構造は螺旋構造ですが、
1,4結合のみで直線状構造である「アミロース」と、
1,6結合を含んで枝分かれがある「アミロペクチン」とにわかれます。
アミロースは直線状で比較的分子量が小さく、
温水になら溶かすことができます。
またヨウ素デンプン反応では綺麗な濃青色を呈色します。
アミロペクチンは枝分かれによって巨大になるため、
温水にも溶かすことができません。
アミロペクチン100%の食べ物がお餅。
枝分かれ同士が絡み合って、
ネバネバ感が出ているイメージです。
ヨウ素デンプン反応では赤紫色に呈色します。
以上をまとめると以下の通り。
多糖の種類②:グリコーゲン
アミロペクチンよりもさらに枝分かれが増えると、
「グリコーゲン」と呼ばれるようになります。
グリコーゲンは「動物デンプン」とも呼ばれます。
人間は肝臓でグリコーゲンを作ることで、
ブドウ糖を蓄えておくことができるのです。
グリコーゲンは枝分かれが多すぎて、
「結合の端」の部分がたくさんあります。
端の部分はどれも極性を持っているため、
水が配位しやすく温水に溶けることができます。
また枝分かれが多い分、
ヨウ素デンプン反応では赤褐色を呈色します。
多糖の種類③:セルロース
β-グルコースだけからできた多糖が「セルロース」です。
セルロースはβ-グルコースが表裏表裏…
とつながった構造、つまりセロビオースがつながった構造です。
表裏が交互にくるため直線の構造です。
さらにセルロースは、
一直線になった分子同士が水素結合を作るため、
巨大なシート状の構造を作ります。
見た目からわかるように頑丈な構造で、
細胞壁や合成繊維の材料としても使われています。
糖類の分解酵素
最後に糖類を分解する酵素も紹介しておきましょう。
これまで単糖がつながってできる、
二糖や多糖を見てきました。
特に多糖は自然界に多く存在し、
生物は多糖を体内で分解することで栄養を得ています。
生物は酵素を使って多糖を分解します。
酵素の名前は簡単で、
糖の語尾の-oseを-aseに変えるだけです。
例えば、
アミロース(デンプン)の酵素はアミラーゼ、
マルトース(麦芽糖)の酵素はマルトースです。
以下にデンプンとセルロースの分解過程をまとめておきます。
命名のルールさえ覚えておけば、
覚えることは特にありませんね。
まとめ
今回は糖類の解説でした。
覚えるべき二糖の種類が、
①マルトース(α-グルコース)
②セロビオース(β-グルコース+β-グルコース(裏))
③ラクトース(β-ガラクトース+β-グルコース(裏))
④スクロース(α-グルコース+β-フルクトース(裏))
でした。
覚えるべき多糖の種類が、
①デンプン(アミロース・アミロペクチン)
②グリコーゲン
③セルロース
で、全てグルコースが材料でした。
糖類は覚えることが多く感じますが、
構造式の基礎の部分を押さえていれば、
そこまで苦労は感じないと思います。
まだまだ定着しないなと感じる人は、
ぜひ単糖の復習をしてみてください。
スクロースのβ-フルクトースの部分の構造式が違ってます。他の受験生の為にも直しといて下さい。
ご指摘ありがとうございますm(__)m
・二糖の種類④内の構造式
・二糖まとめの表内の構造式
共に訂正しました。非常に助かります。