合成高分子化合物をわかりやすくまとめてみた

合成高分子化合物をわかりやすくまとめてみた

「合成高分子は覚えることが多すぎる!」

「熱可塑性か熱硬化性かがわからない…」

あなたも合成高分子化合物に対して、
このような感情を抱いていませんか?

合成高分子化合物は一見暗記事項が膨大で、
すべて暗記するのは不可能にも思えるでしょう。

あなたが合成高分子を暗記できないのは、
教科書や学校の授業では知識が雑然としており、
本質的なまとめがなされていないからです。

ここでは合成高分子を楽に暗記するための、
本質的なまとめ方を説明しますね。

ここの内容を理解することで、
膨大に思えた合成高分子に1つの「型」ができ、
復習すればするほど化合物の名前や性質が頭に染みつきます。

知識が頭にスルスル入ってくる感覚に、
あなた自身も驚くことでしょう。

そのような状態になるために、
ぜひ読み飛ばさずに最後まで読んでみてください。

合成高分子化合物とは?

合成高分子化合物」とは、
分子量の小さな有機化合物をたくさん繋げて作る、
分子量10000以上の有機化合物です。

プラスチック、ゴム、衣服などに使われており、
とっても身近で重要な化合物です。

合成高分子化合物は巨大であるため綺麗に結晶化せず、
分子量も密度も一定ではありません。

たくさん繋がった炭素骨格が絡まって、
ごちゃごちゃになってしまっているイメージです。

それではまずは、
合成高分子の性質を確認していきます。

合成高分子化合物の性質

それでは合成高分子化合物の性質を見ていきます。

構造に注目しながら見ていくと、
納得感を持ちながら性質を理解できると思います。

では順番に確認していきましょう。

①合成高分子の構造

合成高分子は以下の二種類の構造があります。

まず1つ目の構造が「線状構造」です。

細長い有機高分子化合物が集まり、
お互いに分子間力で繋がった分子結晶のような構造です。

実際には完璧に結晶化しているというより、
分子が集合しているだけですが。

そしてもう1つの構造が「立体網目状構造」。

線状構造に枝分かれができてお互い繋がった構造です。

以下にも頑丈そうな見た目ですね。

②熱に対する性質

線状構造と立体網目状構造で、
熱に対する性質が変わります。

線状高分子化合物は弱い分子間力でまとまっているため、
熱すると分子が動き出して軟化してきます。

このような性質を「熱可塑性」といいます。

一方立体網目構造の高分子化合物は、
網目状にかなり大きな分子になっているため、
熱を加えても柔らかくなりません。

このような性質を「熱硬化性」といいます。

熱可塑性と熱硬化性は、
このように高分子の構造からくるものなんですね。

熱硬化性樹脂は、耐熱性、絶縁性、強度などで熱可塑性樹脂より優れていますが、生産に時間がかかったりリサイクルが難しかったりという弱点もあります。

③弾性・繊維性・イオン交換性など

合成高分子は、その構造によってさまざまな性質を持ちます。

例えばバネのような構造であれば「弾性」を、
細長く延びる構造があれば「繊維性」を、
イオン結合で出てた塩の構造があれば「イオン交換性」があったりします。

これによって、
単に合成高分子といってもさまざまな種類があるのです。

どんな物質がどんな性質を持つのかに関しては、
具体的な化合物が出てきたときに紹介します。

合成高分子化合物の製法

合成高分子化合物は、
分子量の小さい「単量体(モノマー)」を重合させ、
「重合体(ポリマー)」を作ることで得られます。

重合には、
①付加重合
②縮合重合
③開環重合

などの種類があります。

合成高分子化合物は莫大に暗記があるように思えますが、
作り方ごとにまとめておくとかなり覚えやすいです。

それでは順番に確認していきましょう。

①付加重合

多重結合を持つモノマーを、
付加反応によって次々とつなげていくのが「付加重合」です。

付加重合でできる合成化合物には主に、
ビニル系ジエン系があります。

ビニル系

有機化学で勉強したように、
二重結合が単に付加重合を起こすものがビニル系です。

官能基の-Xのところが変わることで、
いろいろな種類の化合物が見られます。

これらは全て一直線につながっているため、
どの化合物も熱可塑性です。

最初はこれらを全部覚える必要はありません。

まずは「ビニル系にはこんな種類があるんだ」
程度に理解しておけば十分です。

ポリエチレン」は袋などに使われます。いわゆるポリ袋とはポリエチレン袋のことです。また「ポリ塩化ビニル」は代表的なプラスチックで様々な用途に使われます。昔はポリ塩化ビニルが袋に使われたことから、現在でもポリ塩化ビニル袋からビニール袋と呼ばれているのです。

ジエン系

2つの二重結合が面白い仕組みで繋がるのがジエン系です。

最初は1、3の位置にあった二重結合が、
重合したあとには2の位置に移っていますね。

これは以下のような仕組みで起こります。

1、3が両側に手を伸ばした結果、
片方は重合に、片方は2の位置での結合に、
使われたのですね。

特徴的で面白い仕組みなので、
一度見ておくと簡単に覚えられると思います。

官能基の-Xのところが変わることで、
いろいろな種類の化合物が見られます。

これらはどれもゴムとして使われています。

一直線の付加重合なので熱可塑性なのですが、
こちらに関しては少し注意が必要です。

実はポリブタジエンなどをゴムとして使う場合、
少し硫黄を混ぜる「加硫」という操作をします。

これを行うことで適度に分子間が繋がり、
ゴムとして丁度いい弾性を得ることができるのです。

加硫を行うことで、
分子間がつながって立体網目状構造になりました。

このことからわかるように、
普通ゴムは熱硬化性になっています。

以下がジエン系の構造の例です。

なんとなく弾性を生みそうな構造ですね。

例外

「ビニリデン系」として、
メタクリル酸メチルを重合した「メタクリル樹脂」もあります。

入試レベルでは、
ビニル系・ジエン系以外はメタクリル樹脂くらいなので、
例外として押さえておきましょう。

②縮合重合

縮合重合」とは、
モノマー同士から水などの簡単な分子が取れて起こる重合です。

付加重合はどれも一直線な構造でしたが、
縮合重合では官能基の場所によって構造が変わります。

構造ごとに分類して見ていきましょう。

線状構造の場合

縮合重合を起こしてできる代表的なポリマーには、
エステル化でできる「ポリエステル」と、
アミド化でできる「ポリアミド」があります。

ポリエステルの例としては、
テレフタル酸とエチレングリコールからできる
ポリエチレンテレフタラート」があります。

ポリエチレンテレフタラートを略すとPET、
つまりペットボトルなどに使われています。

ポリアミドの例としては、
アジピン酸とヘキサメチレンジアミンからできる
6,6-ナイロン」があります。

炭素数が6のアジピン酸と
炭素数が6のヘキサメチレンジアミンからできるから、
6,6-ナイロンという名前です。

名前からも想像できるように、
6,6-ナイロンは合成繊維として使われています。

高校レベルのポリエチレンとポリアミドは、
これら2つを覚えておけば問題ないです。

そして両方の構造から当然これらは熱可塑性です。

アミド結合を持つ6,6-ナイロンは、単に一直線の構造をしているのみならず、以下のような水素結合で分子同士がまとまります。

これによって繊維性がより強く現れてきます。

立体網目状構造の場合

複数の方向に結合を作れる場合、
複雑に枝分かれが起こることで立体網目状構造となります。

その具体例が「フェノール樹脂」です。

フェノールとホルムアルデヒドHCHOを反応させると、
以下のようにフェノールがつながります。

当然このような反応はなかなか起こらず、
高温・高圧下で反応させます。

この反応はオルト位とパラ位で起こるため、
以下のように次々とつながっていくのです。

このようにして、
熱硬化性で非常に硬いフェノール樹脂ができます。

フェノールが次々と網目状にくっついていて、
いかにも硬そうですよね。

その性質から、
フェノール樹脂は機械の部品として使われたりします。

フェノール樹脂と同様に網目状構造を取るものを、
以下にいくつか紹介しておきます。

テストで構造式を問われることはほぼないので、
「こんなのがあるんだー」程度に理解しておきましょう。

③開環重合

「開環重合」とは、
環状構造が開いて次々と繋がる重合です。

考え方は縮合重合と同じですが、
あらかじめ脱水などがされているので、
新たに分子が外れることはありません。

入試レベルではε-カプロラクタムしか出てこないので、
これだけを押さえておけば問題ないでしょう。

側鎖を変化させる場合も

場合によっては重合した後に、
側鎖を変化させることもあります。

これは使用用途に応じて、
化合物の性質を変化させるためです。

例えば「ビニロン」の製法を見てみましょう。

ビニロンの材料はポリ酢酸ビニル。

この側鎖である-OCOCH3を変化させます。

これによって線状構造に補強が入り、
頑丈な構造になりましたね。

このようにして作られたビニロンは繊維として使われます。

動画で復習

今回の内容は動画でも解説しているので、
ぜひそちらも御覧ください。

まとめ

今回は合成高分子化合物の解説でした。

合成高分子の多くは、
①付加重合
②縮合重合
③開環重合

でできているのでした。

このうち①②をまとめると以下のとおりです。

こうまとめると意外と少なく感じるのではないでしょうか。

この大枠を理解した上で、
具体的な化合物は少しずつ覚えていけばいいと思います。

また、③についてはε-カプロラクタムからできる、
6-ナイロンさえ押さえておけば問題ないです。

ぜひこの記事は何回か読み返し、
完璧な知識にしておきましょう。

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