混合気体の分圧を解説!仕組みがわかれば簡単!

混合気体の分圧を解説!仕組みがわかれば簡単!

混合気体の分圧はかなりの高校生がつまづく分野です。

「どこに目をつければいいかわからない!」

「そもそもこの計算なにやってるの?」

あなたも混合気体の分圧で、
頭の中がごちゃごちゃになっていませんか?

混合気体の分圧の問題で苦労してしまうのは、
気体が混ざるという「現象」を正しくイメージできていないからです。

ここでは混合気体の分圧を、
何が起こっているのかがイメージしやすいように解説します。

この記事を読むことで、
混合気体の動きが頭の中でイメージできるようになり、
解法に全く困ることなく問題を解けるようになります。

もはや「分圧って何が難しいの?」という状態になるでしょう。

それでは解説していきます。

気体を混合するとどうなるか

気体の性質を考えていくためには、
気体の状態方程式」が必要不可欠です。

ぜひ以下も確認しておいてください。

気体の状態方程式の使い方を徹底解説!

かなり基本的な内容からお話しします。

物質量nAの気体Aが体積VAの箱の中に入っているとしましょう。

「体積」とは気体が動き回れる範囲のことですから、
このときの気体の体積はVAです。

それではこの気体Aの入った箱を、
物質量nBの気体Bが入った体積VBの箱とくっつけたらどうなるでしょう。

AとBの間の板を外すと、
気体Aの動ける範囲がVA+VB(=V)に広がります。

もちろん気体Bにも同じことが言えて、
壁を取り去ることで動ける範囲がVになりました。

今、気体たちは体積Vの箱の中にいて、
気体Aは圧力PAを、気体Bは圧力PBを、
箱全体にかけています。

しかし気体の粒は外から見ると区別できず、
しかも気体Aと気体Bから同時に圧力を受けますから、
実質的には以下のようになります。

このように混合気体の中で、
個々の気体の圧力PA、PBのことを「分圧」といい、
混合気体の全体の圧力P=PA+PBを「全圧」といいます。

同じ体積Vの箱に2つの気体が混ざっていたら、当然どちらも体積はVです。分子の粒の動きをイメージすれば当然ですね。箱の中で気体が「住み分け」して体積を分割したりはしません。

ドルトンの分圧の法則

以上の混合気体の性質を、
もう少しきちんとした流れで考え直しましょう。

以下のような混合気体があったとします。

このときそれぞれの気体について、
もしも自分以外がいなかったときの圧力を「分圧」と言います。

この「もしもの圧力」である分圧を全部足すと、
ちょうど全圧に一致します。

これを「ドルトンの分圧の法則」と言います。

分圧と全圧について状態方程式を考えれば、

\begin{align*}
\mathrm{ PV } &= \mathrm{ (n_{A}+n_{B})RT }\cdots① \\
\mathrm{ P_{A}V } &= \mathrm{ n_{A}RT }\cdots②\\
\mathrm{ P_{B}V } &= \mathrm{ n_{B}RT }\cdots③
\end{align*}

混合気体ではVとTが共通だから、
②と③からわかるように分圧と物質量の比が同じです。

さらに②÷①を考えれば、

\[
\mathrm{ P_{A} = P × \frac{n_{A}}{n_{A}+n_{B}} }
\]

のように全圧のモル分率が分圧となっています。

分子の粒の数だけ圧力を加えている、
という意味なので、これは当たり前ですね。

ドルトンの法則は当たり前な法則に見えますが、実は理想気体でないと成り立ちません。例えば分子の形や大きさが違えば、同じ物質量を混合しても圧力が変わりそうな感じもします。大学で「熱力学」という分野を勉強するとドルトンの法則を証明することができます。

練習問題

分圧のイメージが湧いたところで、
いくつか練習問題を考えてみましょう。

(問題)
(1)体積一定の容器に水素を0.2mol、酸素を0.3mol入れると全圧が1.0×105になった。それぞれの分圧は何Paか。
(2)体積8.3Lの容器に水素を0.5mol、酸素を0.4mol入れて27℃にした。全圧とそれぞれの分圧は何Paか。

すぐに公式を思い出そうとするのではなく、
どんな現象が起こっているのかをイメージしてみましょう。

そうすると自然に公式が思い浮かんできます。

それでは解説です。

(解説)
(1)

モル分率の公式を使えばいいのだけれど、この絵が頭に浮かべば「水素が2/5、酸素が3/5の圧力を担当するんだな」とイメージできますね。

\begin{align*}
P_{H_{2}} &= \frac{0.2}{0.2+0.3}×1.0×10^{5} \\
&= 4.0×10^{4} \\
P_{O_{2}} &= \frac{0.3}{0.2+0.3}×1.0×10^{5} \\
&= 6.0×10^{4}
\end{align*}

(2)

まずは全圧を出します。

\begin{align*}
P &= \frac{(0.5+0.4)×8.3×10^{3}×(27+273)}{8.3} \\
&= 2.7×10^{5}
\end{align*}

あとは先ほどと同じです。

\begin{align*}
P_{H_{2}} &= \frac{0.5}{0.5+0.4}×2.7×10^{5} \\
&= 1.5×10^{5} \\
P_{O_{2}} &= \frac{0.4}{0.5+0.4}×2.7×10^{5} \\
&= 1.2×10^{5}
\end{align*}

「難しいなー」と思った人はもう一度原理を確認しておきましょう。難しいのではなく「難しく考えてしまっている」だけです。

まとめ

今回は分圧の解説でした。

分圧とは自分以外がいなかったとした時の圧力で、
分圧を全て足すと全圧になるのでした。

このように一言にまとめると単純ですが、
一番大切なのは現象を正確に理解することです。

きっちりと現象をイメージできるまで、
しっかりと復習しましょう。

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