ヘンリーの法則をわかりやすく解説!

ヘンリーの法則をわかりやすく解説!

ヘンリーの法則は実はめちゃくちゃ簡単なのに、
ほとんどの高校生が一度はつまづいてしまいます。

あなたもヘンリーの法則に出会った時に、
「何が起こってるんだー!?」
と思ったことがあるのではないでしょうか?

ヘンリーの法則がわからなくなるのは、
ヘンリーの法則の説明の仕方が2種類あり、
そのせいで現象のイメージが浮かばなくなるからです。

今回は「何が起こっているか」がイメージできるように、
ヘンリーの法則を解説します。

ここの内容をきちんと理解すれば、
ヘンリーの法則がめちゃくちゃ簡単な問題に見え、
気体の問題がスラスラ解けるようになります。

ぜひ最後まで読んでみてください。

ヘンリーの法則とは

ヘンリーの法則」とは、
温度と溶媒の量が一定であれば、
溶媒に溶ける気体の物質量は圧力に比例するという法則です。

短い言葉で言えば、
押した分だけ溶ける
ということです。

このように考えるとヘンリーの法則はとても単純です。

1.0×105Paで押して1mol溶けるのであれば、
2.0×105Paで押すと2mol溶ける、というだけですね。

しかしこんなに単純なのに、
かなり多くの受験生がヘンリーの法則でつまずいてしまいます。

なぜそのようなことが起こるのかというと、
実際の問題では「物質量と圧力の関係」ではなく、
体積と圧力の関係」を問われることが多いからです。

これについて次の章で見ていきます。

ヘンリーの法則をしっかり理解するためには、気体の取り扱いに慣れている必要があります。気体の問題に不安がある人は、以下の記事で復習しておきましょう。
【合わせてチェック】
気体の状態方程式の使い方を徹底解説!
混合気体の分圧を解説!仕組みがわかれば簡単!

混乱の原因

ヘンリーの法則で混乱する原因は、
先ほどの「物質量と圧力の関係」による定義の他に、
「体積と圧力の関係」による定義があるからです。

ヘンリーの法則
一定温度で一定の量の溶媒に対して、
(i)物質量と圧力の関係
溶媒に溶ける気体の物質量は、圧力に比例する。
(ii)体積と圧力の関係
溶媒に溶ける気体の体積は、その圧力のもとで一定になる。

「比例するのか一定になるのかどっち!?!?」
と混乱してしまいそうですね。

しかし冷静に考えてみれば、
実はこれらは全く同じことを言っているんです。

現象がイメージできればとっても簡単なので、
ここから集中して見ていきましょう。

2つの定義の意味

まずは圧力P[Pa]をかけたときに、
物質量n[mol]だけ溶けた場合を考えましょう。

体積\(V=\frac{nRT}{P}\)分の気体が溶媒に溶け込んでいますね。

次に圧力を2倍の2P[Pa]にした場合です。

圧力を2倍にすることで、
先ほどの体積Vの場所に2n[mol]の気体が集まってきます。

これは\(V=\frac{2nRT}{2P}=\frac{nRT}{P}\)を考えれば、
わかりますね。

この体積Vの部分が溶け込むことによって、
2倍の物質量が溶媒に溶け込むことになります。

溶ける体積の量は一定だけども、
物質量は圧力に比例していることがわかりますね。

圧力が2倍であろうが3倍であろうが、
結局同じ仕組みで気体が溶けます。

何が起こっているかがイメージできれば、
ヘンリーの法則はめちゃくちゃ簡単ですね。

さらに混乱を与える問題

実はヘンリーの法則がわからなくなる原因は、
もう1つあります。

例えば以下の問題を見てください。

(問題)
1.0×105PaのCO2の水への溶解度は、水1.0Lに対して27℃で4.5×10-2molである。水1.0Lに対して27℃で2.0×105の圧力をかけると、その体積は1.0×105Paのもとで何Lか。

問題は最後の部分、
その体積は1.0×105Paのもとで何Lか
です。

これが何を表しているのかを順番に説明しますね。

まずは2.0×105PaでCO2を溶かします。
これまでに説明した通り、ヘンリーの法則に従って溶けます。

ここまでは先ほどの説明通りです。

しかし最終的に知りたいのは1.0×105Paのもとでの体積。

今の状態では2.0×105Paなので、
溶かした気体を仮に取り出してきたとすると、
それが1.0×105Paで何Lになるかをみる必要があります。

体積と圧力の関係によるヘンリーの法則では、
「その圧力のもとでは一定」となっていますが、
このように見る圧力が変わる場合には成り立たないのです。

(解答1)
圧力が2倍になっているから、溶ける気体の分子量はヘンリーの法則より、
\[
2×4.5×10^{-2}=9.0×10^{-2}mol
\]この物質量の気体の、1.0×105Paのもとでの体積は、
\begin{align*}
V&=\frac{9.0×10^{-2}×8.3×10^{3}×300}{1.0×10^{5}} \\
&=2.24…\\
&≒2.2[L]
\end{align*}

(解答2)
最初の状態で溶けている体積は、
\begin{align*}
\frac{4.5×10^{-2}×8.3×10^{3}×300}{1.0×10^{5}} \\
=1.12…\\
≒1.1[L]
\end{align*}ヘンリーの法則より、圧力を2倍にしても溶けている気体の体積は一定(物質量は変わっている)。
2.0×105Paのもとで1.1L溶けているのだから、1.0×105Paのもとでは、
\begin{align*}
2×1.12…\\
=2.24…\\
≒2.2[L]
\end{align*}

混合気体の場合

もし溶媒に接している気体が混合気体の場合も、
分圧」で考えていくだけです。

混合気体の分圧を解説!仕組みがわかれば簡単!

具体的な問題で考えてみます。

27℃、1.0×105Paの空気(N2:O2=4:1)が水1.0Lに接している。それぞれ何mol溶けているか。ただし水1.0Lに対する27℃での1.0×105Paの気体の溶解度は、N2が6.0×10-4mol、O2が1.2×10-3molとする。

混合気体で一見難しそうに見えますね。

でも分圧をしっかり理解していれば、
実は全然難しくないんです。

今、N2の分圧は0.8×105Paだから、
単に0.8×105PaのN2の溶解を考えればいいのです。

同様に、O2の分圧は0.2×105Paだから、
単に0.2×105PaのO2が溶けるのを考えるだけです。

それでは解答を見てみましょう。

(解答)
N2の分圧は0.8×105Pa。
1.0×105と比べると圧力は4/5倍で、
1.0×105での溶解度は6.0×10-4molだから、
\[
\frac{4}{5}×6.0×10^{-4}=4.8×10^{-4}mol
\]

O2の分圧は0.2×105Pa。
1.0×105と比べると圧力は1/5倍で、
1.0×105での溶解度は1.2×10-3molだから、
\[
\frac{1}{5}×1.2×10^{-3}=2.4×10^{-4}mol
\]

まとめ

今回はヘンリーの法則の解説でした。

ヘンリーの法則は、
「押したら溶ける」という単純な法則ながら、
定義の違いで混乱してしまうのでした。

押した分の粒がたくさん溶けるけど、
その分圧力で圧縮されるから体積は変化しない、

というのが理解できていれば混乱はしないでしょう。

さらにヘンリーの法則が理解できても、
問題形式や分圧が絡むことでややこしくなるので、
実際に問題演習も忘れずにやっておきましょう。

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