熱化学方程式はエネルギー図で考えろ!

熱化学方程式はエネルギー図で考えろ!

「熱化学方程式は式が多くて大変…」

「いつも計算ミスをしてしまう」

「解くのに時間がかかってしまう」

あなたもこのように感じたことはありませんか?

熱化学方程式をきちんと解けるようにするのは、
なかなか難しいものです。

熱化学方程式が苦手になってしまう原因は、
そもそも熱化学方程式の解き方の基本を知らないからです。

ここでは化学が得意な人がみんなやっている、
熱化学方程式の基本の解き方を解説しますね。

ここの内容を身につけることで、
熱化学方程式でミスしたり時間がかかったりしなくなり、
テストで出るとサービス問題に見えるようになるでしょう。

熱化学方程式ってこんなに速く解けるんだ、
と驚くことでしょう。

本質的な解き方を理解せずに、
素早く正確に解くことはできません。

この記事を読んでぜひものにして見てください。

熱化学方程式・ヘスの法則などをすでに知っている人、エネルギー図に絞って知りたい人は以下の記事がオススメです。実践的な演習問題も用意しています。
【合わせてチェック】
エネルギー図の書き方!熱化学方程式を得意科目に

熱化学方程式とは

熱化学方程式」とは、
熱の受け渡しも考慮した化学反応式のことです。

例えば石炭を燃やしたりする反応は以下の通り。

C(固)+O2(気) = CO2(気)+394kJ

化学反応式は左右の原子だけが一致していますが、
熱化学方程式では合計のエネルギーも一致するので、
「→」ではなく「=」でつなぎます。

この熱化学方程式は「Cを1mol反応させると394kJ発生する」という意味があります。

同様に一酸化炭素COを燃やした場合の熱化学方程式は以下です。

CO(気)+1/2O2(気) = CO2(気)+283kJ

「COを1mol反応させると283kJ発生する」
という意味なので、COの係数を1にするためにO2の係数が分数になっています。

これは熱化学方程式特有ですね。

ヘスの法則

ヘスの法則」は、
化学反応が起こっても全体のエネルギーは変わらない、
という法則で、熱力学的に言えば「エネルギー保存則」を指します。

ヘスの法則が成り立つからこそ、
熱化学方程式を考えると便利なんです。

例えば炭素を不完全燃焼させて一酸化炭素COを作るとき、
どうしてもCO2もできてしまって反応熱が測定しづらいです。

そこでヘスの法則を利用します。
C→CO2とCO→CO2の熱が測りやすいことを利用して、
C→COの反応熱を求めることができるのです。

このように実験をしなくても反応熱がわかるのが、
熱化学方程式の面白いところです。

熱化学方程式とエネルギー図

このようにエネルギーの計算に便利な熱化学方程式は、
エネルギー図を利用するのが基本中の基本です。

エネルギー図を利用することで、
意味もわからず計算するのではなく、
視覚的にエネルギーの関係を捉えることができます。

エネルギー図の書き方には「型」があるので、
きっちりと身につけていきましょう。

「エネルギー」と「熱」

まずは「エネルギー」と「」という言葉についてです。

化学で「エネルギー」という言葉を使う場合、
基本的には「必要なエネルギー」のことを指します。

つまり〜エネルギーと言われたら、
何か大変な作業をするために必要なエネルギーということです。

それに対応して、
化学で「熱」という言葉を使う場合は、
放出するエネルギー」のことを指します。

まずはこの使い分けを理解しておきましょう。

エネルギーの順番

物質はエネルギーが低いほど安定です。

例えばO2やH2Oなどは空気中に存在しますが、
O原子やH原子がそのまま存在することはありませんよね。

このように物質の状態によって、
エネルギーの高低が決まっているのです。

熱化学方程式では、
「イオン・原子・単体・化合物・完全燃焼物・水和物」
の6つの状態が以下のエネルギーの順に並びます。

例えば先ほどの炭素の熱化学方程式は、
以下のようにエネルギー図を行き来しているだけです。

イオンはエネルギーが高いにもかかわらず、水溶液中にはZn2+などが存在しています。これは水溶液中では[Zn(H2O)4]2+の形で水和しているため、エネルギーが一番低い状態になっているからです。
合わせてチェック:錯イオン形成反応

エネルギー図の書き方

エネルギーの順番を覚えたところで、
エネルギー図の書き方を学んでいきましょう。

さて、最初に説明した通り、
エネルギーは「必要なエネルギー」のこと、
熱は「放出するエネルギー」のことでしたね。

これをエネルギー図で考えると以下のようになります。

つまり、
・燃焼熱
・生成熱
・溶解熱
など「熱」がつくものは下矢印、

・結合エネルギー
・格子エネルギー
・イオン化エネルギー
など「エネルギー」がつくものは上矢印で書きます。

Q. 「吸熱反応」はどう考える?
吸熱反応はエネルギーを必要としているため「エネルギー」と呼ぶべきですが、「溶解熱」「溶解エネルギー」などと呼び分けるのはわかりにくいので「マイナスの熱」として扱います。吸熱であっても発熱と全く同じように考えれば大丈夫です。

熱化学方程式の解き方

エネルギー図の書き方がわかったところで、
実際の問題を使って解き方を確認してみましょう。

解き方は、
①熱化学方程式をすべて書く
②それらをエネルギー図に書き込む
③エネルギー図から方程式を立てて解く

の流れです。

以下の問題を解きながら、
流れを理解していきましょう。

(問題)
エタンの燃焼熱を求めよ。ただし、
H2+1/2O2 = H2O+286kJ
C(固)+O2 = CO2 + 394kJ
2C(固)+3H2 = C2H6+86kJ
とする。

①熱化学方程式をすべて書く

まずは熱化学方程式をすべて書きます。

このとき、求める熱は文字でおきましょう。

C2H6+7/2O2 = 2CO2+3H2O+QkJ
H2+1/2O2 = H2O+286kJ
C(固)+O2 = CO2 + 394kJ
2C(固)+3H2 = C2H6+86kJ

②それらをエネルギー図に書き込む

この熱化学方程式をすべてエネルギー図に書き込みます。

順番に書き込みましょう。

これでエネルギー図の完成です。

今回で言えば最終的に求めたいのはエタン1molの燃焼熱なので、一番最初にエタンを書き込むとうまく図が書けます。

③エネルギー図から方程式を立てて解く

ここまできたらエネルギー図を見るだけです。

同じ高さの部分が同じエネルギーになることに注目しましょう。

複雑な計算なしに簡単に答えが求まりました。

練習問題を解きたい人は

練習問題を解きたい人は、
ぜひ以下の記事を読んでみてください。

エネルギー図に絞った記事で、
実践的な演習問題を扱っています。

エネルギー図の書き方!熱化学方程式を得意科目に

まとめ

今回は熱化学方程式の解き方を解説しました。

熱化学方程式の解き方の基本は、
とにかくエネルギー図を書くことでした。

解き方をまとめるなら、
①熱化学方程式をすべて書く
 - わからない熱を文字でおく
②それらをエネルギー図に書き込む
 - イ・原・単・化・完燃・水和の順
 - 「エネルギー」は上、「熱」は下
③エネルギー図から方程式を立てて解く

でしたね。

エネルギー図の書き方をマスターして、
確実に解けるようにしておきましょう。

きっと試験本番に、
「熱化学方程式!よっしゃ!」
と思えるようになります。

理論化学カテゴリの最新記事